聴覚記憶(脳内録音)の話

「映像記憶」について耳にすることがたまにある。

目で見たものを記憶し、写真に撮ったように脳内で思い出すことができるという能力だ。記憶した映像の中の文字や細かな模様を、脳内で写真をズームして確認するかのように、思い出すことができるのだと思う。普通は、その文字や模様に注目しなければ、覚えることが出来ないのだけど。

画家の山下清はその能力を使って、放浪を終えて帰って来たあとで、記憶のみを頼りに、各地で見た風景を描き上げたという。一瞬を切り取ったかのような、人の表情までも再現した詳細な画だ。

映像記憶は、山下清のように天才と呼ばれる領域の人が持つ能力であるとも言われる。一方で、そこそこ多くの人が、実は同じようなことができているという話も聞いたことがある。そして、大人になると失う能力なのだとか。

私の場合は、映像記憶はぜんぜん心当たりがないのだけど、脳内録音ができていたんじゃないかと思う。
普段から、聴覚で記憶するのが身に合っていたので、暗記する時はブツブツと声に出して読んでいた。でも「脳内録音」と呼んだほうはそれとは違い、暗記しようとしてブツブツ呟いて覚えた訳でなくても、録音した音を再生するように後から思い出せることがあった。

もしかすると、人というのは普通そういうことが出来て、特別な能力ではないのかもしれないけれど。

脳内録音には、テストの時よく助けられた。「しまった、暗記し忘れた所が問題に出た。答え何だっけ」と、問題用紙をじっーと見て困っていると、その科目の先生の声で、先生が言う時の抑揚のまま、答えが脳内に突然再生されるようなことが何回もあった。思い出そうとして記憶を巡らせている訳ではなくても。

 高校の時の日本史の先生の声は記憶しやすかったらしく、再生されることが多かったからよく助けられた。英単語は何故か、先生の声ではなく脳内にその日本語の意味がパーンと浮かび上がる感じだった。脳内録音がちょっと助けてくれる日本史、英語、古典は得意科目だった。

また、友人の話をぼーっと聞いていて聞き逃してしまった時、何秒か前のことなら、音声を脳内リピート再生するということができたから、友人の気分を害さないのに役に立った。


音楽家で、一度聞いた音楽を即座に楽器で再現する人がいるのをテレビや本で聞いたことがある。私は音楽の再現などはめっぽう駄目だったけど、言葉や意味については無意識に記憶していたようだった。聞こえて来た音を音楽的なものと結び付けるか、言語と結び付けるかも、人の脳の特性によって違うんだろう。

映像記憶は、大人になると衰えてくるとも聞いた。わたしも最近では、人の話を聞き逃すことが多くなって、リピート再生できないことが多くなってきたので注意しなければ、と思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください