愛宕神社

鳥居から愛宕神社へと昇る階段は、「出世の階段」と言うそうだ。
気が付かずに、裏の小さな階段から境内に昇ってしまった私たちは「しまった、出世を逃した」と大笑いをした。

旦那さんが来月から海外赴任になるというその友人は、旦那さんと一緒に海外には行かず、日本に残る決断をしたという。
夫婦一緒に海外に行けるようにと、会社が用意してくれた現地のポジションには、日本人の自分が人件費の安い国にいくとコストがかかるからと辞退したらしい。
彼女らしい配慮だと思った。

彼女と一緒に仕事をしたのは、私が社会人になりたての頃。
私はがむしゃらに仕事を頑張って、人一倍努力をしなければ、幸せになれないと信じていた。
でも実際には、頑張って多少認められても、足を引っ張られることもある。
嫉妬されたりとか、空気を読んだりとか。そういう事が煩わしくて嫌になって、私はその会社を飛び出した。
与えられた環境と上手く折り合いをつけることができなかった自分の未熟さも、嫌でたまらなかった。

リラックスすることも人生には、そして世の中には必要なんだ。彼女といるとそう思う。
周囲とバランスをとる。淡々と毎日を生きる。たまには、息抜きをする。
そういったことの尊さ。

まだ17時なのに東京の空には夜が訪れていた。
木々の間からライトアップした東京タワーが見えた。

頑張っても、そうじゃなくても、私たちはきっと行きつく所に行きつく気がした。
繊細に生きられない私も、きっと流れがどこかに運んでくれる。
時間が経った今、不器用だった自分の思い出も、どうでもいいように思えた。

その友人はこの先もきっと、会社に大事にされていくのだろうと思った。
遠くから、家族の団らんを見守っているような、温かい気分になった。