【ワーキングマザー】遠距離婚を振り返る

数年前に子どもを授かり、私は産前産後休業と育児休業を取って、職場に戻った。
夫はかねてから、仕事の都合で遠方にいた。私は仕事をやめて夫と一緒に住むという選択肢もあったけど、それまで働いた会社に愛着があり、また仕事内容にやりがいを感じており、遠距離婚のまま子育てと仕事を続けることを選んだ。
そして3年後、転職と転居し、夫と一緒に暮らし始めた。
   
遠距離婚をしていた間、あまり多くの人が選ばない形態の家族の在り方に、「これでいいのだろうか」と悩むことが多かった。今、遠距離婚を解消して数年経った。時間が経って、あの時の経験が今にどのようにつながったのか、考えてみたい。
 

何とか3年乗り切ったが、体力的にはやはり辛かった。

 
私の場合は、近くに頼れる親がいなかった。電車で片道2時間ほどの距離にいる夫の両親、ファミリーサポートさん、病児保育、家事代行サービス、食材の宅配。考えられるものは全て頼ったけど、それでも仕事と子供のことで朝から晩まで、余裕がなかった。
  
子育てには息抜きが必要だという。けれど、用事がある訳でもないのに、子どもを人に預けるのは後ろめたい気持ちになる。子どもと家に2人きりでいても、まったく休めない。トイレの前までも追いかけてきて泣き叫ぶ子供のために、家の中で5分と一人の時間がなかった。年末年始や連休は親に子供(孫)を合わせなければ。会社では、出産前のプロジェクトからは外され、将来が思い描けない部署にいた。
 
時間にも気持ちにも余裕が無く、誰かに助けを請うにも、何を助けて貰ったらいいのか分からなかった。夫に電話しても、やはり離れて住んでいるからか、その苦しさは伝わらないようだった。誰かに子供を預けて、ゆっくり休むといっても、一日やそこらでは回復しようがないほど、疲れていた。毎日がギリギリだった。全然、笑顔もないし、この苦しさを乗り切ったら何かが良くなる気もしなかった。
     

やり直せるとしても、やはり遠距離婚を選ぶ

新卒で入った会社。自ら提案して立ち上げたプロジェクトも、出産前にやっと動き始めたところ。仕事は厳しいけれども楽しかった。突然の出産を機にやめるなんて、考えられなかった。
  
あの時に時間が戻ったとして、今の自分ならどういう選択をするか考えてみたのですが、やはり、同じ選択をすると思うのです。しばらくは遠距離婚のまま働いて、その後、夫と一緒に住むよう転職する、といったような。
 
それは、リスクからの選択です。
出産を機に退職したとして、子供がある程度大きくなってから、また総合職の正社員として働き口を見つけることは難しいかもしれない。出産前までに、仕事である程度経験を積んでいる人なら話は別だけど、新卒で入社してから何年かしか経っていない、あまり社会人経験の多くない自分だ。子供がある程度大きくなったあとで、どんな仕事に就けるだろうか。新卒入社からこれまでに積んだキャリアの延長線上には、多分無い気がした。そしてそれは、生涯年収においても損失だし、やりたい自己実現とも違う。そのリスクを考えると、やはり遠距離婚を選ぶと思います。
  

あの時の自分にアドバイスをするなら

その上で、当時の自分になにかアドバイスするとすれば、「会社に入れ込みすぎるな、ほかの会社で働く選択肢はいくらでもある」ということだと思います。
  
私は、新卒で入社し、出産後も働き続けたその会社で、本当に一生働き続ける気でした。若手で仕事が楽しい時期。他の会社に移るなんて考えられませんでした。
しかし子供を出産してから、職場をたらい回しになるたび、評定や審査のたび、職場の同僚と価値観が衝突するたびに感じる疑心暗鬼。「自分はこの先会社で居場所があるだろうか」「出産や育児は自分のキャリアにマイナスなのではないか」という疑念。
    
その不安の訳は、「会社に入れ込み過ぎていた」ことでした。たかが仕事だと、割り切れていなくて、何が何でもいい評価をもらって、会社の中でそこそこ成功していたかった。けれど実際には、いい仕事をできている訳でもなく、価値観も、その会社で許されるライフスタイルも、自分には合わなくなって来ていました。にもかかわらず、その会社で順調にうまくやりたいというプライドが強すぎたことが、様々な不幸せの源だったのです。
 
なんとなくでも、働き続けていれば形になったのかもしれません。そういう、心のゆとりが持てなかったことは、良くなかったと思います
 

遠距離婚でも、仕事を続けて良かったこと

仮に子どもが生まれたタイミングで一度、会社を辞めていたとしても、もしかしたら就職活動の末、今の仕事に就けていたかもしれません。それならば、遠距離婚で働き続けずとも、さっさと新しい会社で新しいキャリアを気付くべきだったでしょう。
しかし、出産したのも同級生の中で早く、そういった再就職ができるかどうかの例を周りに持たなかった私は、子育てのブランクを経ての再就職ができるのかどうか、予想がつきませんでした。その点では、遠距離婚をしてでも仕事を続けることで、できる方法で人生のリスクを避けることはできたのかもしれません。
 
また、物の見方がずいぶん変わったように思います。
出産して職場に戻って感じた数々の違和感。社内の制度、同僚の働き方、そういったものが、子供を持つ前と後では、全く違う風に見え、会社とは何か、職場はどうあるべきか、といったことを随分考えるに至りました。また、違う世界を見ようとして資格を取ったり、本を読んだり、他業界の人に会ったりした努力。それらのことが、今の自分の糧になっているように思います。月並みな結論ですが、逆境から学んだことは多かったとも、今では感じています。