「FDA リスク&ベネフィット コミュニケーション: エビデンスに基づく健康・医療に関する指針」

知人の主催する勉強会で、こういう本を読みました。
 
 

 
 
この本は医療関係で患者さんと直接かかわる方、また医療メーカーの方向けの書で、
FDA(アメリカ食品医薬品局)が提唱する「リスク ベネフィットコミュニケーション」のためのガイドラインの和訳版です。

原文はこちら。無料で読めます。もし英語で読むのに抵抗がない方であれば、こちらから読んだ方が内容を掴みやすいかもしれません。


 

「リスクベネフィット コミュニケーション」とは?

そういう疑問を持った方のために、私の言葉で恐縮ですが、ざっと書かせていただきます。
医療現場では、患者さんに自身に、受ける治療を選んでもらうシーンがあるかと思います。手術を受けるか受けないか、どの薬を使うか。あるいはお医者さんに指示された薬を飲み続けるのかどうか葛藤があったり…など。

そういう時に、私たち一般人がそれぞれ、自分の病気に対してどういう治療を受けるのか、科学的な根拠を基に、メリットやデメリット(副作用など)を考慮して、決められるのが理想的です。

けれど、必ずしもそうではないですよね。
理系をかじった私でも、お薬の添付文書を読むと、「ええーーっと、その意味は…?」と意味を掴めない時がよくあります。
科学的な情報は、読み慣れない人には、とっつきづらいものです。
本書のこの部分が印象的でした。
 
 

2003年では,43%の成人米国人(約9,300万人)は,基礎もしくは基礎より下の,4段階において2番目に低い程度の文章の読み書き能力しかなかった.高卒以下の学歴の成人のほとんどと学士(college degree)の学位を持つ成人の13%は,これらの低いレベルのリテラシーであった.成人米国人の可読性レベルの平均データはないが,7年生から9年生(中学校1年生から3年生)のレベルと言われている.

 
日本人の読解能力はわかりませんが、一般人の私たちにも、お医者さん、薬剤師さんを始め医療関係のお仕事の方は、治療のメリット・デメリットについて説明しなければなりません。それが「リスクベネフィット コミュニケーション」のようです。
  
本書は米国FDAのガイドラインですが、どのように医学のエビデンス伝えれば伝わりやすく、効果的なのかを、データ、言葉、数字だけでなく、心理面まで解説されています。
また、後半では企業はどういう体制をとればいいか、広報やメディアを使うのかといったことまで、解説されています。
 
   

ガイドラインの構成

4部構成です。FDAの原文の目次を引用しながら、紹介しますね。
 
まずは1部目。
医薬品のリスク ベネフィットコミュニケーションとは何か、なぜ重要なのかという導入部。
 

Introduction to Evidence-Based Communication

Chapter 1: Introduction
Chapter 2: Goals
Chapter 3: Evaluation
Chapter 4: Duty to Inform
Chapter 5: Language

  
 
次に、伝える際のテクニカルな部分について。
その治療のリスクをどう定義するか。量、質の表現方法、患者のリテラシー、感情に訴えること、
年齢によって変化する認識能力にどう対応するか、など。このあたりが、読みやすい・興味を持たれる方が多かったですね。私も、この章が実務に役立ちそうだと思いました。
 

Evidence-Based Best Guesses at Best Practices
Basic Processes

Chapter 6: Definitions
Chapter 7: Quantitative Information
Chapter 8: Qualitative Information
Chapter 9: Health Literacy
Chapter 10: Affect and Emotion
Chapter 11: Information and Persuasion
Chapter 12: Across the Life Span
Chapter 13: Health Care Professionals

そして、可読性、警告と情報開示、人間工学、メディア、組織論など。
  

Communication Design

Chapter 14: Readability, Comprehension, and Usability
Chapter 15: Warnings and Disclosures
Chapter 16: Human Factors
Chapter 17: Shared Decision Making
Chapter 18: News Coverage
Chapter 19: Inside the Organization

 
 
さいごに、実務者やFDAの視点から。
 

Implementing Evidence-Based Communication

Chapter 20: Practitioner Perspectives
Chapter 21: An Agency Perspective
Chapter 22: Strategic Planning

 
 

感想

 
コミュニケーションとは、あくまで相手に伝えることが目的で、やはり伝えやすく書くということに尽きます。医療の現場から離れたオフィスにいるためか、そのことを忘れそうになっている自分にも気がつきました。
 
この本は、コミュニケーションのテクニックやヒント・思想がとても充実しています。あくまでガイドラインなので、実例が少ないのは残念ですが、たとえ拾い読みでも、医療従事者や関連企業で働いておられる多くの方に、何かしらヒントになる箇所が見つかると思います。そして日本ではこういう団体https://www.rad-ar.or.jp/もあるようです。